Press-n-Peel Blue PCB Transfer Filmを使い倒す#その2---精細度について---
アクセスカウンター
■Press-n-peelの精細度を調べる

 当方が愛読させてもらっている【自作】 オリジナルプリント基板製作スレ 15層目という2ちゃんねるのスレで、トナー転写方式の精細度について話題になっていました。
 個人的には0.1mmのパターンとかは不要なんで限界について正確に調べた事は無かったのですが、基礎データーとして私もPress-n-Peelのポテンシャルについて改めて調べてみる事にしました。


 こんなパターンをEAGLEで引いてみました。線幅は0.2mm、0.1mm、0.05mm、0.025mmで、ピン間3本、4本、6本を試しています。グリッドは6.25mil(1/16")で、全体のサイズは約24x24mmです。

 なお念のため、0.025mmは約1milです。普通は最低でも5milは確保すると思うので、今回のパターンはあくまでテスト用であって、こんな細いパターンを引いたプリント基板は普通には無いと言える領域です。

 余談ながら私の個人的なデザインルールでは、最細が10mil(0.25mm)であり、全てこのサンプルよりも太い線しか使った事がありません。普段はマイコンなどの繋がっていればいい場所で特に込み入った部分は12mil(0.3mm)、通常なら16mil(0.4mm)、アナログは24mil(0.6mm)、電源線などは32(0.8)〜40mil(1mm)といった辺りを常用しています。

 EAGLEから出力したガーバーデーターはこちらです。


 コピー用紙に印刷したもののスキャンです。
 この時点ですでに解像していない部分があります。

 印刷条件:
  プリンター:Cannon LBP3210 純正トナーカートリッジ(使用度:約20%)
  EAGLE印刷設定:[Black][Solid]
  プリンター設定:LBP3210印字品質:[テキスト/線][中間調:なし][濃度:濃く(+2)]


 試しにトナー濃度を「薄く(-2)」にしてみました。
 線の太さ(太り)に関してはさほど変化が無いようです。つぶれ(解像していない所)はまったく変化なく、この潰れはプリンターの印刷解像力そのものの限界によるものと言えるようです。
 印刷濃度に関しては、トナーは濃い方が確かにエッチング耐性が上がるので、ここは濃く印刷して置くのがいい(それで問題ない)と言えます。

 なお経験的に、PNPは「印刷結果 = 転写結果 = エッチング結果」ですから、この時点で出来上がりは見えています。この通り出来上がるはずです。


 ではPNPに印刷してエッチングしてみます。

 使用基板材:
  片面ベーク 銅箔厚35μm
 エッチング条件:
  ビニールパウチ袋に基板とエッチング新液20mlを空気と共に封入。
  パウチ袋を50℃の湯を張ったバットに沈め、手で揺らす。

 PNPの扱いに関しては私が以前書いた記事に同じです。


 というわけでこれがエッチング結果です。エッチング液節約の為に周囲はマッキー赤でマスクしています。トナーは剥離していません。もちろんやり直しなどはしておらず、この1枚しか作っていません。

 エッチングをもう一押ししてもよかったか。少しアンダーエッチングです。ピン間6本の所とか、表から見て銅の残っている(キラっと銅色が見える)部分が少し有ります。
 まあいずれにしても「PNPは印刷されたものがエッチング結果」という経験則は追認されたと言っていい結果でしょう。


 仔細に見ると、線幅0.025mmは切れている部分が有るので、これは実用限界を割り込んでいると言えるでしょう。0.05mmは実用域に有るようです。0.1mmと0.2mmは完全に実用範囲です。
 外周の0.05mm、0.1mm、0.2mmのグルグルトラックは切れておらず、隣接トラックとのショートもありません(テスターで確認)。
 外形線はEAGLEでは0milで引いていますが、印刷幅としては0.025mmの線と似通っているか、なんとなく少し太いようにも見えます。こちらはすべて繋がっていてどこも切れていません。パターンの方と違って独立していて、エッチング液に乱流が起きないからか、あるいは実際のところ単に太いのか。

 前回PNPを紹介した際に書きましたが、私の環境では印刷結果は線が太くなる指向にあり、限界領域では線幅より線間に注意を払う必要があります。
 0.1mmの線幅を0.15875mm(6.25mil)間隔で配置した、0.05875mmの隙間については印刷時点でくっついており解像していません。0.05mmの線幅が実用になる反面、0.05mmの隙間は実用にならないと言う事です。
 それを斜め45度に配置した部分は隙間が0.05875x√2=0.083mmですが、ここはぎりぎり分離しています。しかしここの隙間(印刷解像度)はゆらいでいるのが解りますし、確実な実用域とは言えない結果です。

 従って、0.025≦線幅<0.05mm、隙間≒0.1mmあたりにLBP3210の限界点があり、実用的な印刷品質を発揮するのは線幅0.075〜0.1mm(3〜4mil)、隙間0.15mm(6mil)からと言った所と判定しました。

 精細度に限れば、プロの製造したものとなんら遜色ない(追加料金なしなら凌駕する)領域にあると言えるでしょう。

 繰り返しになりますが、上記の線幅は全てEAGLEで指定した値の事で、実際の印刷線幅は少し異なっています。
 しかしその差はプリンターの特性によるもので、上記で確かめられた限界は全てプリンターの性能から来たものと言えます。とは言えその限界も実用範囲には影響が無く、安心して目的を果たす事が出来るプロセスであると確信できました。


■メモ:プリント基板エッチングにおけるトナー転写方式の技術変遷

 自作プリント基板エッチングにおけるトナー転写技術についてですが、諸先輩方のたゆまぬ研究により、私が前回PNPについて書いた頃からも色々に技術的変遷があったようです。

 私はPNPしか使用しておりませんし、方式の開発には興味が無いのであやふやですが、興味深いので少し書き留めておこうと思います。

 そもそもこの方式で最初に現れたのは、普通紙に印刷したものをアイロンで生基板に貼り付け、水でふやかして紙を剥がしとってからエッチングするというものでした。私が初めて見たのは海外のWeb上だったと思います。
 しかし紙を剥がす操作が難しく、非常に手間がかかる為に、日本ではポリデントやパイプマンなどの洗浄剤で紙を腐食して除去する方法などが開発されて行きました。

 そうこうしているうちにトナー転写のポテンシャルのみを享受すべく、専用転写シートのPNPが出現しました。
 私はそれまでサンヤハトの感光基板の使いこなしに力を注ぎ、トナー転写方式は傍観しておりましたが、PNPの出現でトナー転写方式は完成したと判断してシートを100枚購入してしまいました。2010年の事です。

 しかしただの紙に比べてPNPは高価な為、ホビイスト諸兄の研究は続き、その方向はPNPを作る方向と、紙方式のさらなる改良の二手に分かれたようです。

 PNPを作る方式は、OHPシートにPVA(洗濯のり)を塗布して、その上に印刷する方式が考えだされました。しかしPVAは熱で軟化する事と、厚みが無視できるほど薄くできない事、均一に塗布する事が難しいなどの様々な要因からパターンの変形がおきやすく、PNPの精細度に追いつくまでには至らなかったようです。

 一方、紙方式で見いだされたのが通称「ぶどう紙」と呼ばれるFUJI FILMの画彩というプリンター用紙でした。
 通常の紙を使った場合は、紙の繊維による凹凸により印刷のむらや転写不良が出て精細度に限界が有ったようですが、ぶどう紙を使用するとこの点が改善され、一応の完成と見なされたようです。

 しかし紙を剥がす操作に手間が依然としてあり、なんとか簡単に剥がせる紙が無いものかという模索は続きました。
 そこで試されたのがクッキングペーパー(オーブンペーパー)などのつるつるした紙でした。

 そして突如としてeBay上に中国発の、非常に安価な薄黄色をした転写シートが現れます。2013年かそれ以降だったと思います。現在の手作り派が注目する先端マテリアルはこの黄色い紙であるようです。
 このシートはいったいなんなのか? シールの台紙(裏紙)の一種ではないかとの事です(笑)。

 はあ、中国人もこの方式をせっせと研究していたのですね。ちなみに向こうの掲示板など見ていると中国人の電子工作のレベルは相当に高く、日本人がやっていないような事もかなり意欲的に取り組んでいたりします。年齢も若そうです。
 そしてうまくいくとそれで製品を売り出したりしています。日本人が考える「製品」というもののレベルからすると心もとなかったりしますが、なによりその熱気がすごく、真の工業大国への歩みは超急速かつ着実に進んでいるように見えます。
 でかすぎる国なので、今後安定した盤石な社会基盤を作れるのか、はたまた不安定に陥って地球半分吹き飛ばす事になるのか、政治的にはよく解りませんけど。

 さて、というわけで日本のマテリアル自作派は100円ショップで全面シール用紙を買ってその裏紙を使う(普通の電子工作者はeBayから買う)、というのが2015年現在の最新トレンドという感じのようであります。


■追記:PNPの終焉

 私は中国製転写シートを使った事が無いのと、具体的使用結果に関する情報も見た事が無かったので、性能に関しては触れませんでした。しかしこのページを公開したところすぐに2chのスレで、件のシートは実用的に完全な結果を得られるものだとの情報を頂きました。

 というわけで、PNPは製品寿命を終えたようです。同じ結果を得られるなら安い方が当然上ですから、今からPNPを購入する意味は有りません。もしこれから取り組まれるなら、転写シートはPNPではなく、あれを買った方がよろしいでしょう。

 それでもPNPはトナー転写方式の十分条件でしか無いので、あのシートを買ってもこのページの情報が多少なりとも諸兄の役に立てば幸いです。私は在庫があるので、同じ結果なら買い直すまでもなくPNPですが(笑)。


 

 <==[戻る] (C)2015 by Shimanagasi


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送