トースターを使ってSMDをリフロー実装する
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 最近コンスタントに少々まとまった数の基板を組み立てているのですが、試行錯誤しているうちにSMD(表面実装部品)でリフローハンダをするに至りました。

 ちなみにリード部品で生産効率を上げる為にここ数年、私はIDEAL-TEK社製のPCSA-1というハンダ付けフレームを使っています。
 これは基板にすべての部品を差し込んだら、スポンジで上から押さえて全体をそっくりひっくり返し、裏側から全箇所一気にハンダゴテでハンダ付けする為の治具です。部品を1個差し込んでは指で押さえてひっくり返し、手が3本か4本欲しいと思いながらハンダ付けするという普通の組み立て法に比べて作業効率は劇的に改善されます。
 PCSA-1のおかげでリード部品で行こうと思っていたもののの、最近さらに組み立てなければならない基板が増えてしまい、もっと楽が出来ないものかと思えて来ました。

 そこで以前からちらほらとネットで見たSMDのリフロー装置を自作してリフローハンダを試して見る事にしました。

 ちなみに手ハンダにSMDはまったく向いていないと思います。ハンドリングの悪さや、基板の穴と部品リードによるセルフアラインメント性が無いゆえの位置決めの困難さなどを考えると、手付けで美しく実装するのは非常に骨の折れる作業で、リード部品以上のアドバンテージを感じません。

 しかしリフローハンダが出来るなら話は別です。部品を基板に一発で乗せてしまえるPCSA-1でも、ハンダ付けは一カ所づつコテを当てる必要がありました。しかし、リフローならハンダ付けも全箇所一発で行われますからさらなる生産効率の向上が図れます。


*2014/06追記:PCSA-1の入手は難しく、私はイギリスのショップ(輸出不可)から買い物代行屋経由で輸入しましたが、最近RSでも取り扱いを開始しました。私が払ったコストよりかなり安くなってます。追記終わり*


●使用した部品

 トースター 内部循環ファン付き 出力1250W
 温度調節器 OMRON E5EK-AA2B 出力モジュールE53-Q
 K型熱電対(ガラス繊維シース)1本
 ACメインスイッチ1個、プッシュボタン2個、ATtiny85、秋月SSR(K-00203)
 抵抗、コンデンサー、配線材等少々

 実際に製作に取りかかるまでに結構時間がかかったのでその間色々妄想しましたが、結局凝らないで作る事にしました。

 トースターは内部循環ファンが内蔵されているものを入手しました。必要かどうか解りませんが、温度の均質化に多少は良いような気がしたので。中古品です。1000円でした。2003年製とかなり古いですが、汚れはほとんど無いレベル。プレーンのトーストしか焼いたことがないようです。

 今回入手した温度調節器はOMRON E5EKです。マルチSVで4点の温度を切り替えて指示出来ます。これも中古。二千円でした。
 なお、マルチSVは必須です。最低でも2点の温度を設定出来ないとリフロー炉を自動運転できません。世の中にはプログラムタイプというタイマーまで内蔵した温度調節器も有りますが、安いものが見つからなかったので見送りました。
 なお、OMRONの温度調節器においてはオプション型番にBが入っているものがマルチSV型です。今回使ったのはE5EK-AA2Bです。

 あとは温度調節器からの設定到達アラームを合図に一定時間保持するタイマーを温度調節器の外部に置けば出来上がります。
 タイマーは多段なのでNE555なんかよりマイコンを使うのが簡単と言うことで、マイコン(ATtiny85)にやらせてます。プログラムはArduino言語で書きました。
 他にヒーターをON/OFFする為に秋月のSSRキットを1個使っています。


●動作

 ボタン1:2段タイマー(リフローハンダ付け)
 ボタン2:単発タイマー(乾燥、余熱)

 回路図プログラムリスト


●現物



 これが出来上がり。元の操作パネルを取り外して自作物をはめ込みました。

  

 中はこんな感じです。

 中枢はなんと言っても温度調節器です。ここに4点の温度と、設定温度到達で出力が出るように設定しておきます。SSRのへの信号出力もここから出ます。今回入手した温度調節器の出力にはSSR駆動モジュールがセットされていたのでおあつらえ向きでした。それとマイコンに電源を供給するのに、空き端子に5Vを出力する改造をしました。あとはK型熱電対と100V電源を繋げば出来たようなものです。
 タイマーが無くとも温度切り替え端子に手動スイッチを付けて時計を見ながら手でパチパチやればそれでも十分使えるレベルです。

 今回使った温度調節器は指示温度が4点設定出来るので、OFF(0℃)、リフロー余熱(150℃)+ハンダ付け(210℃)、乾燥(110℃)を設定する事にしました。もちろん温度は調節器をいじればすぐに変更出来ます。タイマーはプログラムをいじらないと変更できませんが。
 ちなみに上記は鉛ハンダの設定温度です。鉛フリーは個人には特に恩恵無いと思っています。
 タイマーの動作は設定到達後の保持時間を、ボタン1:余熱90秒+ハンダ付け60秒、ボタン2:乾燥60秒としました。

 タイマーを担うマイコンのI/Oは、2個のボタン入力で2ビット、設定温度到達入力1ビット、設定温度の切り替え2ビットで全部で5本です。ブザーとかは必要無いと思ったので付けていません(端子の余りも無い)。

 開発と組み立てで実質2日の作業で出来ました。

 なお組み上がったら最初に温度調節器のPID制御をチューニングする必要があります。適当な基板に熱電対を取り付けた状態でオートチューニング機能を起動して加熱特性を計測させます。
 なお熱電対はベタGNDなどの暖まりにくそうな部分のスルーホールに差し込んで、熱伝導用にハンダを流し込んでいます。



 さて緊張の初リフローです。固唾を呑んで中をのぞき込んでいましたら、表示温度で190℃くらいで音もなくハンダがスッと溶け、5秒もしないうちに全体がハンダ付けされるのを目撃しました。なんともあけっけなく、また美しい光景でした。

 温度の立ち上がりですが、室温から余熱温度までの立ち上がりにおよそ120秒、余熱からハンダ付け温度までの立ち上がりにおよそ60秒でした。保持時間の90秒、60秒とあわせて約5分+冷却時間が1サイクルになります。冷却機能は無いので、OFFになったらドアを10mmほど開け、150℃まで下がったら蓋を開けています。
 温度上昇は丁度1℃/秒程度です。部品の実装ガイドラインには4℃/秒を超えるなという注意が多いのでまあ早くはありませんが、十分使える加熱力はあると思います。

 リフローハンダすると部品は溶けたハンダに浮く事になるので、表面張力で自動的に正しい位置に納まります。手ハンダのように傾きや位置を揃えるのに非常な神経を注ぐ必要はなく、実に美しく出来上がります。
 ただし、なんでもかんでもセルフアラインメントが働くわけではないようで、パッドの大きさが不適切な場合や、コアつきインダクターなどの重たい部品は動かないようです。

 表面張力については、インダクターや電解コンデンサーなどの重い部品は無理ですが、チップCRや小型のICなどは実装後に裏返して再びハンダを溶融させても落ちないようです。
 これを利用して、重い部品を片側に集めるように配慮して設計すれば、2度焼きする事で裏表の両面実装も出来ます。

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 2度目のリフローでは基板をベタ置きするわけに行かないので、スタンドを作って浮かせた状態でリフローします。

●クリームハンダの塗布は?

 クリームハンダの塗布については研究中なので簡単に。

 以前から持っていたRoland ステカSX-8で、カッティングシートを切ってシールマスクを作っています。これだと1回に1枚のシールが必要なので、ステンシルを作る方法を考えた方が生産性は上がりますが、とりあえずまだそこまで行ってません。
 シートをカットする為のデーターはEAGLE PCB-CADを使っているので、tCream層とbCream層からdxf.ulpを使って出力しています。
 クリームハンダを塗り込む為のスキージは、偶々目の前に有ったアラルダイト接着剤のヘラを使ったら大きさといい腰といい丁度良い感じです

 さしあたりそんな所です。


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